はじめまして。「ヴィオリラ博士.com」へようこそ♪
ヴィオリラ奏者の妃城(きしろ)みれいと申します。
- 「ヴィオリラって初めて聞いたけれど、どんな楽器?」
- 「あっ!バイオリンをひと回り大きくした楽器のこと?」
- 「言いづらい名前だけど、どんな音色がするんだろう?」
このページを訪れてくださったあなたの頭の中にも、きっといくつもの「?」マークが浮かんでいるのではないでしょうか。
巷では、有料・無料問わず様々なコンサートが開催されていますが、ヴィオリラのコンサートはなかなか見かけませんよね。
かくいう私自身、音信不通になってしまっていたピアノの恩師と約20年ぶりの再会を果たした際、「成田山の弦まつりでヴィオリラライブをやるから、ぜひ聴きに来て」と誘われ、初めてヴィオリラの存在を知り・・・
「ビ?ヴィ?ヴィオ何?」と、慌てて検索を試みました。
すると・・・
検索結果として表示されたのは、大正琴との比較を基に楽器の特徴を説明するような「大正琴を知っていることが前提」で書かれた記事ばかりだったのです。
大正琴という名前だけしか知らなかった私は、ちんぷんかんぷん。。。
結局、「ま、聴きに行けばわかるよね(苦笑)」と呟いて、ページを閉じてしまいました。
いくつもの偶然が重なり、当時は楽器の存在すら知らなかった私が、今ではヴィオリラ奏者として各地で演奏活動を行なっています。
毎年7・8月には、中・高校生が通う塾からの依頼を受けて塾でミニコンサートを実施していますが、ヴィオリラはもちろん、大正琴を知っている生徒さえクラスに1人いるかいないかという状況です。
大正琴を知らない人にもわかりやすいヴィオリラのサイトがあれば、もっともっとヴィオリラの魅力が伝わるのに・・・
そんな想いで立ち上げたのが、この「ヴィオリラ博士.com」。
ヴィオリラは、一言でいえば「弾き方によって音色や雰囲気ががらりと変わる、ユニークで心癒される弦楽器」です。
ヴィオリラにはピアノの鍵盤のような白黒のボタンが並んでいます。左手でそのボタンを押して弦を押さえながら、右手で弦をはじいたり、弓で擦るなどして音を鳴らします。
1つの楽器を複数の奏法で演奏できる楽器は、他にあまり例がありません。
初めて私のヴィオリラコンサートにご来場くださったお客さまからは、次のようなコメントが寄せられています。
「 1つの楽器なのに様々な音色が出ることや、みれいさんの演奏で曲によって雰囲気ががらっと変わるところが本当に素敵でした! 」<18歳女性のお客さまより>
「ヴィオリラという楽器を見るのが初めてだったのですが、音色の素晴らしさに感動しました。特に、演奏が終わった後の残響をとても大切にしていたのが印象的でした」<60代男性のお客さまより>
いかがでしょうか?
様々な表情を持つヴィオリラのことを、もっと深く知りたくはありませんか?
ここでは、今では「三度の飯よりヴィオリラが大好き♡」な現役ヴィオリラ奏者の妃城みれいが、ヴィオリラの仕組みや弾き方による音色の違いをわかりやすくお伝えしてまいります。
読み進めていただくうちに、どんどんヴィオリラの魅力に惹き込まれていくご自分に、きっとびっくりされることと思いますよ♪
ヴィオリラってどんな楽器?
私のヴィオリラコンサートにご来場くださったお客さまや、体験レッスンに来られた生徒さんからは、日々たくさんの質問が寄せられています。
ここでは、その中でも特に、初めてヴィオリラをご覧になった方が疑問に思われていたことを中心に、ヴィオリラの仕組みや弾き方をご紹介します。
ヴィオリラは弦楽器
こちらは、ヴィオリラを真上から見た写真です。
ヴィオリラの長さは約74㎝、重さは約2㎏。平台の上に水平に置き、基本は立った状態で演奏します。
数字が付られた、ピアノの鍵盤の配置に似た白黒のボタンが印象的ですね。こちらは「音階ボタン」と言います。
一見すると鍵盤楽器のようですが、よく見ると、音階ボタンの下に4本の弦が左右に伸びていて、左端には4つの「弦巻き」があるのが見えませんか?
そう、ヴィオリラはれっきとした弦楽器なのです。
>>>詳しくは「ヴィオリラは弦楽器|実はこんなにあった!弦楽器の仲間たち 」へ
ヴィオリラの弦:基本は1オクターブ違いのソプラノ&アルト2種類
こちらの写真は、音階ボタンに覆われていない箇所(音階ボタンの右端)を拡大したものです。
写真の1番上から第1弦、第2弦、第3弦、第4弦と呼びます。
第1弦~第3弦と、一番下の第4弦を見比べてみると・・・少し太さが違うことにお気づきになりませんか?
第1弦~第3弦は「細線」、第4弦は「細巻線」と呼ばれる弦が張られていて、細線は細巻線の約半分の太さです。
指で弦を一本ずつはじいてみると(=開放弦)、4本全て「ソ」の音が出ます。
但し、一番下(第4弦)に張った細巻線の約半分の太さである細線(第1弦~第3弦)は、細巻線(第4弦)よりも1オクターブ高い「ソ」の音になります。
そのため、わかりやすく細線=ソプラノ線、細巻線=アルト線と呼ぶことが多いです。
ギターやバイオリンに詳しい方は、ここで「えっ?」と目を丸くされます。
なぜなら、基本的にギターには6本、ヴァイオリンには4本、お琴には13本の弦が張られますが、いずれの楽器も、全ての弦は異なる高さの音に調弦されるからです。
ここで、「ピン」ときた方!
そう、ヴィオリラはフルートやサックス、人の声などと同様、「単音(旋律)楽器」の部類に入ります。
ヴィオリラに張られているのは、1オクターブ違いの2種類の弦。
1オクターブ違いの同じ音(例えば、高いソと低いソ)を同時に奏でることはできるものの、二つ以上の異なる音を同時に奏でることはできません。
※物理的には、第2弦をミ、第3弦をソの音になるように調弦すれば和音を出すことはできますが、演奏となると難しいです。
ヴィオリラは単音(旋律)楽器だからこそ、一音一音に魂を込め、自分で音色を作り、磨き上げることで、歌うような音色が出せるようになるのです。
>>>詳しくは「 ヴィオリラで歌おう!|もっと知りたい単音楽器の魅力 」へ
バイオリンに近い!?ヴィオリラの音域は「ソ」から3オクターブ上の「ラ#」 まで
「ヴィオリラの音域はバイオリンとほぼ同じなんですよ」
と聞いて、少し意外に思われるのではないでしょうか。
厳密にいえば、バイオリンの最高音は理論上無限で、奏者の力量などによって変わります。
わかりやすい例を挙げれば、人の声と同じですね。訓練を積んだプロの歌手でも、出せる最高音は様々です。
そのため、バイオリンの最高音の定義は文献によってまちまちです。
現存する楽譜の最高音を指すのか、天才バイオリニストが出したことがある音なのか、はたまたプロと呼ばれるバイオリニストならば出せる音なのか・・・。
但し、人の声は最低音にも個人差がありますが、バイオリンの一番低い音はヴィオリラと同じ「ソ」です。
ヴィオリラの音域は、バイオリンと同じ「ソ」から3オクターブ上の「ラ#」まで。
ヴィオリラの楽譜は廃版となっているので、私はしばしばバイオリンの楽譜をアレンジして演奏します。
今のところ、バイオリンの楽譜で困ったことはないので、バイオリンとほぼ同じと捉えても良いでしょう。
音域の比較がしやすいように、88鍵のピアノの鍵盤上にヴィオリラ・バイオリン・ビオラ・チェロの音域を当てはめてみました。
こうして見てみると、ヴィオリラの音域は、人の声の音域に近いと言われるビオラと、オーケストラの花形であるバイオリンの中間くらいということがわかりますね。
>>>詳しくは「意外と広い!?|ヴィオリラと主要楽器の音域を徹底比較! 」へ
ヴィオリラの弦の数は?意外と深い!本数と音色の関係
音階ボタンの左側にある弦巻きの数が4つなので、ヴィオリラは最多で4本の弦が張れる仕組みになっています。
「最多で4本」ということは、4本でなくても良いということです。
メーカーの倉庫から新品のヴィオリラが出荷されると、細線(=ソプラノ線)が3本、細巻線(=アルト線)が1本張られた状態で届きます。
意外に思われるかもしれませんが、ヴィオリラの場合、4本全て張ったまま演奏する人の方が少ないです。
なぜかというと、本数が多いほど正しい音程を保つことが難しく、弾きにくくなるからです。
そのため、2種類の弦を1本ずつ(計2本)張っている人が多いです。
弓で擦ったり、指ではじいて弾く場合には、基本的にはいずれか一本の弦のみを鳴らしますので、弦が2本でも3本でも4本でも音色に影響はありません。
けれども、ピックで2種類の弦を同時にはじく奏法(=いわゆる大正琴の「ピック奏法」)は、細巻線(アルト線)と、その約半分の太さの細線(ソプラノ線)が同数だと、どうしても細線の方の音量が小さいので、音質のバランスがよくありません。
このように、弦の本数の違いは弾きやすさだけでなく、音色にも大きく影響してしまうのが悩ましいところ。
私は一曲の中でも様々な奏法を織り交ぜて演奏するので、細線2本、細巻線1本の計3本を張った状態で演奏しています。
ヴィオリラのコンサートに足を運ぶ機会がありましたら、奏者の方が何本弦を張っているかぜひ注目してみてくださいね♪
>>>詳しくは「ヴィオリラの弦は何本?|意外と大きい!音色と弾き心地 」へ
ヴィオリラの音階ボタンは「弦を押さえる」ためのもの
ヴィオリラには、「音階ボタン」という数字の付された白黒の鍵盤のようなものが並んでいます。
一見すると、ピアノや鍵盤ハーモニカのように、鍵盤(=音階ボタン)を下に押し込めば、音が鳴るように思えますよね。
音階ボタンの大きさが均一でない、左に行くほどボタンとボタンの隙間が広くなっているという違いはあるものの、音階(ドレミ・・・)の配置はピアノなどの鍵盤楽器と同じです。
但し、鍵盤楽器とは大きく異なる点があります。
それは、この音階ボタンを押しただけでは、音が出ないということです。
ギターやバイオリンをイメージしてみてください。
どちらも左手で弦を押さえていますね。(ちょっとわかりづらいですが・・・苦笑)
でも、左手だけでは音は鳴りません。
左手で押さえた弦を、右手ではじいたり、弓で擦ったりすることで音が出る仕組みになっています。
つまり、ギターやバイオリンが音の高さ(ドレミ・・・)を確定させるために指で弦を押さえる代わりに、ヴィオリラは音階ボタンを押して弦を押さえているのです。
また、ひとつの音階ボタンで同時に全ての弦を押さえてしまうので、ボタンを複数個同時に押さえたとしても、一番高い(右側)の音だけが優先されます。
一見すると鍵盤楽器に見えますが、音階ボタンを押しただけでは音が出ないという点で、鍵盤楽器とは大きく異なりますよね。
ヴィオリラの「音を鳴らす」のは右手の役割
右利きの人でも左利きの人でも、音階ボタンは左手で押さえます。
では、右手は?
はい。左手と同じように音階ボタンを・・・という風にはなりませんね。
左手で弦を押さえながら、右手で押さえた弦の音を鳴らすという仕組みは、先程お伝えしたギターやバイオリンに近いと言えます。(ギターには左利き用もありますが)
では、音を出す右手は、弦のどの辺りに触れるのでしょうか。
ヴィオリラには、音階ボタンの右端に電磁マイクがあります。 >>>詳しくは「ヴィオリラは電子楽器ではありません 」へ
この電磁マイクと駒の間のわずか約5.5㎝の幅の弦をはじいたり、弓で擦ったり、叩いたりして音を鳴らします。
たった5.5㎝と侮るなかれ!
はじいたり弓で擦る位置が電磁マイク寄りか、中央か、駒寄りかによっても、音色や音量が変わりますので、地味ながら(苦笑)、右手は繊細なコントロールが要求されているのです。
>>>詳しくは「 ヴィオリラの仕組みを知ろう!|各パーツの名称とそれぞれの役割 」へ
弾き方が変われば音色も変わる!多彩なヴィオリラの音色
ヴィオリラはどう構える?弓を用いる弦楽器では異色の平置き楽器
一般に、ヴィオリラは平台に置いて演奏します。
縦に立てて抱えたり、ギターのようにストラップを取り付けて肩に掛けて演奏することもできるのでは?とも思われるかもしれません。
けれども、ヴィオリラは音階ボタンを押す指の力で音程が変わり、音を鳴らす右手を繊細にコントロールすることで音色や多彩な表現が可能になります。
バイオリニストの葉加瀬太郎さんのように、ステージを自由に動き回りながら弾けたら素敵だなと思うものの・・・。
バイオリンは約0.5㎏、ヴィオリラは約2㎏。
地味に重い・・・。とてもあのように身軽には動けそうもありませんね(笑)
ヴィオリラの弦を指で弾くと?|素朴で哀愁を帯びたギターのような音色
ヴィオリラは、細線(=ソプラノ線)と細巻線(=アルト線)という2種類の弦を張るのがスタンダード。
まずは、ギターのように弦を一本ずつ指ではじいて音を鳴らすピッチカート奏法をご紹介します。
張られている弦の種類によっても異なりますが、細巻線(アルト線)のみをはじくと、アコースティックギターのような素朴で柔らかい音色がします。
ジャズやボサノバのアドリブ部分でこの奏法を用いると、雰囲気が出て素敵ですよ。
また、素朴さと懐かしさを感じられる音色なので、哀愁を帯びた海外民謡や日本の抒情歌などにも効果的です。
基本的には、右手には何も持たずに親指または中指で弦をはじきますが、曲の途中で部分的にこの奏法を用いることも多いです。
そのような、弓を置いたり持ち直したりする時間がない場合には、写真のように弓を持ったまま弦をはじきます。
>>>詳しくは「弾き方ひとつでがらりと変わる! |もっと知りたいヴィオリラの弾き方と音色」へ
ヴィオリラの弦をピックで弾くと?|大正琴?エレキギター?マンドリン?
大正琴やギター、マンドリンなどでお馴染みのピックを用いても、様々な音色を奏でることができます。
ピックとは、ギターなど弦をはじいて演奏する楽器(=撥弦楽器)を演奏する際に用いる道具のことです。
素材はプラスチックや合成樹脂のものが主流ですが、中には金属やべっ甲でできたものも!
形状も様々で、楽器店で商品を見ているだけでも楽しいですが、ヴィオリラに付属しているものは、3㎝程度の大きさの薄い三角形のものです。
このピックを親指と中指で挟み、人差し指を添えてくるくる回らないように注意しながら、三角形の角を弦に垂直に当ててはじいて音を鳴らします。
ソプラノ線とアルト線をピックで同時にはじく奏法は、大正琴の奏法と全く同じです。
この奏法に限って言えば、ヴィオリラ=大正琴ですね。
また、マンドリンのように、同一の音を小刻みに演奏するトレモロ奏法も可能で、中国風の曲や演歌などの演奏にとても良く合います。
>>>詳しくは「ヴィオリラと大正琴は親子関係!?|歴史にみる違いと共通点を徹底解説! 」へ
更に、ピックでアルト線のみ、ソプラノ線のみをはじくと、どのような音色がするでしょうか?
ピックでアルト線だけはじくと・・・指ではじくよりもしっかりとした芯のある音がします。 エレキギターのような音色で、激しいロック調の曲にも合います。
ピックでソプラノ線だけをはじくと・・・チェンバロ(ハープシコード)のような少し不思議な音色がします。オルゴールのような雰囲気が欲しいときにも重宝します。
但し、アルト線、ソプラノ線をはじく奏法だけで1曲通して演奏することは、ほぼありません。
曲の一部にこれらの奏法を織り交ぜて演奏することで、メリハリのある曲に仕上がります。
ピックの世界も、実は意外と奥が深いのです。
>>>詳しくは「弾き方ひとつでがらりと変わる! ヴィオリラの弾き方と音色」へ
ヴィオリラの弦を弓で擦ると?|憧れのバイオリンを奏でるように・・・
弓で弦を擦って音を出す、これぞヴィオリラの真骨頂と言うべき奏法です。
使用する弓はバイオリンと全く同じ形状ですが、 ヴィオリラ購入時にセットされている弓は、通常大人が使用する弓(=4/4サイズ)よりも少し短い 3/4サイズです。
ヴィオリラは平台に置いて演奏するので、長すぎると扱いづらいというメーカーの判断からでしょう。
音を出す際は、上から見て、弓を弦に対し常に垂直になるよう構えます。
アルト線を擦るときは、ほんの少し手元を下げて弓先を上げるように持ち、ソプラノ線を擦るときは手元を少し上げて弓先を下げるように持ちます。
下の写真のように、電磁マイクと駒の間のむき出しになっている部分の弦を、弓を垂直に前後に滑らせるように擦ると音が鳴ります。
余談ですが、バイオリンの弓は実に種類が豊富!
初心者用のバイオリンセットに付属している(通常、バイオリンと弓は別々に購入するそうです)数千円程度のものから、プロバイオリニストが使用する何千万円(ひぇ~っ)というものまであります。
ヴィオリラの場合、弓と楽器はセットで販売されていますが、何本も買い替えている方も少なくありません。
楽器、弦、弓、松脂のそれぞれの相性、更には自分の出したい音色によって選択肢は千差万別です。
>>>詳しくは「ヴィオリラの弓は?付属の物と買い替えのタイミング 」へ
ヴィオリラの音色は、弓で細巻線(アルト線)を擦ると、低音域はチェロのような音色、高音域はビオラのような音色がします。
ヴィオリラのアルト線の音域は女性の声に近く、弓で音程を揺らして(=ビブラートを深くかけて)弾くことができます。
バイオリンよりも音質が柔らかいので、「音色に癒される」感覚をおぼえる方も多いですね。
また、しっとりと歌い上げるような音色が奏でられるので、弾いていてとても気持ちが良い!
歌に自信がない方には、ぜひカラオケ代わりにおススメです。自分の音色で自分が癒されますよ♪
細線(ソプラノ線)は、きらびやかでバイオリンよりも少しか細い音色がします。
また、「本当に同じ楽器なの?」と思ってしまうほど、 弾き手によって音色が大きく異なる点も注目です。
ちなみに、「みれいさんのイメージにぴったり」 と言われる私の音色は、よく「柔らかい音色」「癒される音色」というご感想をいただきますが、曲によっては「笛のような可愛らしい音色」と表現されることも。
私は身長150㎝、手もピアノの一オクターブがやっと届くほどのミニサイズ。身体に似合わず(笑)ダイナミックな曲も好きなので、高く可愛らしい音色だけでなく、低音の深い響きも出せるよう日々研究を重ねています。
ヴィオリラは、弾き手の性格や体格、その時の精神状態までもを「音色」として表してしまう、ある意味「とても正直な(怖い?)楽器」なんですよ♪
>>>詳しくは「ヴィオリラの真骨頂!弓での弾き方と音色の違い 」へ
ヴィオリラは大正琴!?大正琴と21世紀生まれのヴィオリラの関係
ヴィオリラは2001年に楽器メーカーのヤマハ(株)が開発した弦楽器で、世に送り出された当初は別の名前が付けられていました。
その名も「サイレント大正琴」。
私の手元には、亡き恩師の形見である発売当初のヴィオリラがありますが、製造番号が記されたシールを見ると・・・はっきりと「大正琴」と表示されています。
「えぇっ!?ヴィオリラって、やっぱり大正琴だったの!?」
そんな声が聞こえてきそうですね。
そうなんです!当初は、 「進化系」の大正琴というような位置づけで発売予定だったようです。
ここで、少し大正琴の歴史について触れておきます。
大正琴は、ヴィオリラが誕生する90年ほど前の1912年(大正元年)に名古屋で発明されると、家庭用楽器として日本で大流行。なんと、東南アジア方面にも輸出されていました。
ところが、第二次世界大戦により愛好家は激減、大正琴製造メーカーも空襲により大打撃を受けてしまいます。
けれども、 戦後の復興期に大正琴を使用した名曲(古賀政男さん作曲の『人生劇場』など)の登場や楽器の改良などによりブームが再来。
更に、1980年代から90年代にかけては長きにわたり第三次ブームが続き、愛好家の数もどんどん増えていきました。
深刻な少子高齢化が見込まれる状況で、従来型の子供を対象とした音楽教室を運営するだけでは生徒数の減少を食い止めることはできないと考えたヤマハ(株)は、シニア世代を中心に人気を集めていた大正琴に白羽の矢を立てます。
とは言っても、既に大正琴は多くの楽器店で作られていましたので、ヤマハは言わば「最後発組」。他のメーカに追随するだけでは、楽器メーカーとしてのプライドが許さなかったのでしょう 。
1993年に消音機能を備えたアコースティックピアノ「サイレントピアノ」を開発したヤマハは、ちょうどその頃、従来のアコースティック楽器にも同様の機能を備えた「サイレントシリーズ」を次々に発表していました。(厳密にいえば、弦楽器は弦を擦ったりはじいたりする音が生じますので、「サイレント」とは言っても無音にはなり得ず、結構な音量がしますのでご注意!)
そこで、バイオリンやギターと同様に楽器の胴体が空洞の構造であった大正琴を、ヤマハの「サイレントシリーズ」の技術を駆使して、空洞部を持たない新しいタイプの大正琴を開発。それが、後にヴィオリラと名付けられる「サイレント大正琴」の始まりだったというわけです。
>>>詳しくは「もっと知りたい!大正琴とヴィオリラの歴史と仕組み 」へ
「弓で弾く」は偶然の産物!?ヴィオリラ誕生秘話
でも・・・ヴィオリラの最大の特徴は「弓で弾くこと」だったのでは?と思われますよね。
実は、この「大正琴を弓で弾く」という発想自体は、大正琴が発明された大正時代に既に存在していました。
けれども、高価なピアノに代わる大衆向けの「家庭用楽器」として広まった大正琴は、誰でも簡単に奏でられることが最大の売り。弓で弾く奏法は、音程も取りにくく難しいという理由から、そのような弾き方があったことさえも忘れ去られてしまいました。
時代は平成へと移り変わり、21世紀を目前に控えたある日のこと。
ヤマハ音楽教室で楽器の指導をしている講師達による宴会の席で、「大正琴を弓で弾いたら、どんな音がするだろうね」という話が出ました。
その席には、大正琴とチェロの講師が自分の楽器を持って参加していて、「おっ!ちょうどいいね!」と、チェロの講師が自分の弓で大正琴の弦をギコギコ擦ってみたのだそうです。
その時の音色は、とても聴けるようなものではなかったそうですが(笑)
ところが、なんとこの偶然の出来事がきっかけで、既に「サイレント大正琴」の開発が進められていたところに、新たにバイオリンの弓でも弾けるような改良が施され、2001年に「サイレント大正琴」が誕生したのです。
ただし、「楽器は完成したけれど、弾ける人がいない・・・」という状態からのスタート。
「弓でどのように弦を擦れば良い音が鳴るのか。そもそもこの楽器の良い音色とはどんな音なのか・・・」
サイレント大正琴を全国に普及させるという特命を帯びた、選ばれし講師たちによる試行錯誤の日々が続きます。
その講師たちを以てしても、なかなか良い音が鳴らなかったそうで、発売直前まで「付属品に弓をつけるか否か」の議論がされたほど。
こうして、元々は「弓『でも』弾ける大正琴」として産声を上げた「サイレント大正琴」ですが、発売されると、これまでの大正琴の奏法に加えて、「バイオリンの弓でも弾ける!」という新鮮さが、多くの注目を集めました。
大正琴の新たな可能性に魅せられて、長年大正琴を嗜まれていた方が転向されたケースも少なくないそうです。
紛らわしいけれど納得!的を射ていたヴィオリラの名称
「ヴィオリラ(Violyre)」という名前は、「ヴィオール」と「リラ」という、2つの言葉を組み合わせた「造語」です。
当初は「サイレント大正琴」として展開したものの、予想以上に「弓でも弾ける」ことに対する反響が大きかったため、楽器の特徴を表した相応しい名称を求める声に応えるべく新たな名前が付けられたのです。
そう、「ヴィオリラ」というのは楽器の総称ではなく商品名です。「エレクトーン」や「ピアニカ」などと同じですね。
ヴィオールとは、弦を弓で擦って音を出す「擦弦楽器(さつげんがっき)」の総称です。中世から18世紀にかけて、この「擦弦楽器」のことを「ヴィオール(Viol)族」と呼んでいました。
バイオリンやチェロ、二胡なども、このヴィオール族(=擦弦楽器)に含まれ、弦をこすり続けることで音が鳴り続ける持続音を出します。
一方、弦をはじいて音を出す弦楽器のことを「撥弦楽器(はつげんがっき)」といいます。 古代ギリシャでは竪琴のことを「リラ」(Lyre)と呼んでおり、弦をはじいた瞬間は大きく、その後どんどん小さくなる減衰音が鳴ります。
お琴やギター、ハープやマンドリンなどが代表的な撥弦楽器です。
つまり、ヴィオリラという言葉には、弓で弦を擦って音を出すことも、弦を弾いて音を出すこともできる、どちらも楽しめる楽器という意味が込められているのです。
ヴィオリラは電子楽器ではありません
「ヴィオリラには電磁マイクが付いていています」
「ヴィオリラは、アンプに繋いでスピーカーから音を出す楽器です」
このように申しますと、「ヴィオリラは電子楽器なんですか?」と質問される方も少なくありません。
かく言う私自身、「ヴィオリラは電磁マイクで音を拾ってスピーカーから音を出す楽器だけど、誰が弾いても電気的に合成した同じ音色が出るわけではない・・・。だから、電子楽器ではないはず。でも、マイクが付いているからアコースティック楽器とは言えないし・・・」と、初めはうまく説明できませんでした。
結論から言えば、ヴィオリラは電子楽器ではなく、電気楽器。いわゆるエレキ楽器の仲間になります。
「電子楽器」と「電気楽器」。
確かに、どちらも聞き覚えのある言葉ではありますよね。では、果たしてその違いは何なのでしょうか?
馴染みのある「電子楽器」と言って真っ先に思いつくのは、電子ピアノ。
物理的に何かを振動させて音を出すのではなく、鍵盤のひとつひとつが、「ド」のスイッチ、「レ」のスイッチ、「ミ」のスイッチ・・・のようになっていて、打鍵することによってそのスイッチがオンになり、内蔵された音データが再生される仕組みです。
音データにはピアノの音色だけでなく、ギターやハープシコード、バイオリンの音色など、違う音データを内蔵させておけば、同じスイッチ(=鍵盤)で異なる音データを再生させることができます。
内蔵されたデータの音色が良いほど、良い音が出る仕組みです。
つまり、同じ機種の楽器を全く同じ設定で弾けば、楽器によって奏でられる音色が異なることはありません。
また、楽器による個体差がないだけでなく、誰が弾いても「音色」自体の差は生まれません。
どんなに初心者であっても、どんなに埃をかぶった古い状態にあった楽器でも、電子楽器はいわゆる「ピッチが合っていない」「音程が狂っている」「音痴」「気持ち悪い音」という状況は生じないのです。
ここで、かつてエレクトーンプレーヤーだった者として誤解のないよう付け加えるなら、もちろん、奏者によって演奏は大きく変わります!
音データスイッチ(=鍵盤)の性能も飛躍的に向上し、打鍵の強弱の差までも緻密に再現できるよう進化していますので、差がないのは音色だけで、同じ楽譜を見て同じ楽器で演奏しても、奏者によって抑揚や表現は大きな差が生まれるからです。
一方、「電気楽器」でお馴染みの楽器と言えば、エレクトリックギター(=エレキギター)。
エレキギターは発音体としての弦を有していて、その弦の振動を内蔵マイクで拾って拡声する楽器です。
「電気楽器」の音色は音データの再生ではなく、その楽器の生音が電気的に拡声されたもの。
弦をはじくなどして生じた楽器の振動を電磁マイクを通して電気信号へ変換し、その音をアンプで増幅しスピーカーから出力するという過程で、アンプやスピーカーなどの音響機器により、同じ人が同じように弾いても多少の音質の差は生じます。
けれども、楽器の個体差があり、奏者による個体差もある。良い音で弾けば良い音が鳴る(その逆もしかり)というのはアコースティック楽器と同じです。
電気楽器の仕組みは、生音の電気的な拡声。
外付けのマイクで音を拡声させたアコースティック楽器と、楽器に内蔵されたマイクで音を出す電気楽器は、ほぼ同じ仕組みです。
つまり、電気楽器もアコースティック楽器も全く同じで、出ている音の違いは、楽器の音というよりも奏者自身の音の違いなのです。
いかがでしょうか?
ヴィオリラは電子楽器ではなく電気楽器。良い音色を奏でるためには、アコースティック楽器と同様に、自分の演奏技術を磨くより他に道はないのです。
なぜ!?ヴィオリラは希少性の高い楽器!
2019年2月下旬のこと。
なんと、ヴィオリラの製造元であるヤマハより、「大正琴・ヴィオリラ生産完了のご案内」という内示がありました。
「21世紀日本生まれの新しい弦楽器」として華々しくデビューしたはずなのに・・・
令和の時代を迎える前に、終焉を迎えることになったのです。
3月にはヤマハのコーポレートサイトでも「在庫がなくなり次第販売終了」と発表され、当初は私の元にも多くの方からお問い合わせやご心配の声が寄せられました。
在庫があるうちに・・・と、ヴィオリラの大量発注に踏み切った音楽教室。
せめて弦だけでも・・・と、消耗品の大量発注に奔走された愛好家の方。
名称を変更した演奏家グループ・・・などなど。
生産完了=即販売終了ではないにも関わらず、「ヴィオリラがなくなる!」ことに対する条件反射なのか、しばらくは過剰なまでの動きが見られました。
かねてより、「万一の事態に備えて、コンサートで代役を担えるスペアのヴィオリラを育てておいたほうがいいかも・・・」と考えていた私も、もはや年貢の納め時と観念し(笑)発注!
こちらの写真は、発注から2ヶ月後に届いたヴィオリラの写真です。
ですが・・・
ヤマハのコーポレートサイトを確認したところ、2019年7月現在、まだメーカーに在庫はあるようです。
もし「ヴィオリラを始めてみたいな」と思われた方は、ぜひお早めにご相談くださいね♪
ヴィオリラってどんな楽器?まとめ
ヴィオリラは2001年に大正琴を基に開発された日本生まれの新しい弦楽器ですが、生誕20年を待たずして、生産終了が決定されました。
現在、ヤマハ(株)の他に数社の大正琴メーカーから弓弾き大正琴が販売されています。
「今後はそれらの楽器を伝えていくことになるかも」と思いリサーチしてみたのですが、どうやら従来の大正琴の奏法で演奏する楽器とは別に、「弓専用」の大正琴として作られているようです。(実は、ひとつだけ弓でもピックでも弾ける楽器を発見しました。ただ、楽器の仕様が公表されているものが見当たらなかったため、ここでは割愛させていただきます。)
ヴィオリラは、ヴィオリラ1挺で、従来の大正琴と全く同じピック奏法もできれば、指で弾いたり弓で擦ることもできる唯一の楽器。
電子楽器ではないのに、奏法を変えることによって、1曲の中でも音色や雰囲気をがらりと変えられるうえに、音色がとにかく柔らかく優しいのです!
これほど楽器としての魅力と可能性に満ち溢れた楽器なのに生産終了だなんて・・・。
でも、ここで歩みを止めてしまったら、ヴィオリラは幻の楽器として世間から忘れ去られてしまうことでしょう。
ヴィオリラが幻の楽器となってしまわないよう、そして再びヴィオリラが作られることを願い、私は今後も様々な形でヴィオリラの音色をお届けしてまいります。
ヴィオリラの音色は奏者によってかなり異なりますから、ぜひいろいろな演奏を聴いてお好みの音色を見つけてみてくださいね♪
>>>ヴィオリラ演奏動画「情熱大陸”JOUNETSU TAIRIKU”|ヴィオリラ(弓でも弾ける大正琴)Japanese TaishoーKoto “Violyre”|妃城(きしろ)みれい Mirei Kishiro| 」へ
最後までお読みいただき、ありがとうございました。